東京映画帝国

”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評/あらすじ]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

「サウルの息子」感想 <手汗の次は、目がどっと疲れる体感型映画>

期待してたんだけど、良くも悪くもユダヤ人(収容所)ものなので、ユダヤ人とその歴史的歩みにシンパシーを持てる人 か、そういうガチな光景を観るのが好きな人向け。 冒頭の人類史に残る蛮行と、それを観せるTPS視点、狭い画角・アスペクト比、浅い被写界深度…

"愛はすべてを解決するけど、愛が壊すこともある"「ビューティー・インサイド」ネタバレなし感想

評判がすこぶるいいので鑑賞。アジア映画は見逃すとレンタルなかったりするからなー。 「目覚めるたびに毎日顔が変わってしまう男の恋」というのはタイムリープモノっぽい。自分はそういうの大好きなんで一気に引き込まれた。SFチックなネタと恋愛、洒落たタ…

「ザ・ウォーク」感想 <テロか、アートか>

どこのレビューも手汗、手汗ってナンボのもんじゃいと思っていたけれど、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス監督作なら観ないわけに行かない。特に予備知識なく観たから、ワールド・トレード・センター戦でのワイヤー上の展開には「え…

「白鯨との闘い」感想 "地球は神からの預かりもの、望むようにしていいのだ"

クリス・ヘムズワースとロン・ハワード監督の「RUSH/プライドと友情」が好きだったので鑑賞。 捕鯨ネタって日本人的にはなんかノレないなーと思いながらも、中身は意外と何かと(神の名の下に)自己を正当化し、地球を我が物のように使う人間の傲慢さに警鐘を…

「ピンクとグレー」感想 "人が本当に分かり合えるなんてことはないんだよ"

原作者のNEWS加藤シゲアキ君はよく宇多丸師匠のタマフルに出ていて、しっかりとした映画ファンなのを知っていて、それでも「ジャニーズによる芸能界モノ小説が原作かー」と侮ってた。けど意外にも期待値を超えて、鑑賞後もズーンと後に残り色々考えてしまう…

「イットフォローズ」感想 <指に中途半端なタトゥーをしちゃうような頭の軽い女の子に何か起きても何も感じない>

某所で激賞されてたからかなり期待してたけど、普通のホラー映画の域を出ない映画だった。 怖さだけの、特にドラマのないホラーは嫌いな人なので、事前情報でも出ている「アレをするとアレに追いかけられる」以上のことが見えてこなかったのは残念。モチーフ…

映画「ブリッジ・オブ・スパイ」感想 <規則を守ることがアメリカ人の証である>

"誰であろうと公正な裁判を受ける権利がある。そして、憲法に忠実であることが、アメリカ人がアメリカ人たる根源である。規則を守ることがアメリカ人の証である" "冷戦下スパイ交換の顛末"という性格上、わかりやすい娯楽性は薄いけど、法廷劇、人間ドラマ、…

映画「母と暮らせば」感想 <戦中、戦後を知っている映画監督があと何人いるだろう>

評判がいいのと「小さいおうち」から再びの山田洋次監督&黒木華出演ということで観てきた。 まずこの超ベテラン監督が、お話の下敷きにサラッと「長崎、キリスト教、原爆」っていう誰しも言わないようにしてるネタをぶっこんできたのはすごいなと(笑)「日…

映画「クリード チャンプを継ぐ男」感想 <その名に誇りを持て>

ロッキーシリーズの大ファンという監督の作品だけあって「アポロの子がボクサーに、あのロッキーがトレーナーになる」というファンならシビれる設定が最高。完全にアップデートされた定番の「ランニングシーン」「ニワトリ追いかけトレーニング」など入れこ…

「スターウォーズ フォースの覚醒」感想 <止まらない悲しみの業(カルマ)、この物語を続けるということはこういうことだった>

"歴史は繰り返さないが、韻を踏む" なんだ最高か。 上述の言葉のように、偉大な旧作のただの"繰り返し"もしくは"完全スルー"ではなく、一級のラッパーのように軽やかにリズムに乗りながら、絶妙なセンスで言葉を変えきちんと旧作にリスペクトを捧げて、物語…

「007スペクター」感想 <500系のスカイフォール、700系のスペクター>

007原体験は世代的にピアーズ・ブロスナンなんだけどその鈍重さに苦手意識が生まれていて…。諸々ブラッシュアップされているクレイグ版シリーズ、「スカイフォール」すらいまひとつノレなかった人なので、今回はなおさら。 うーん、今年「しがらみ」や「シリ…

「リトルプリンス 星の王子さまと私」感想 "心で見た時に本当のことがわかる"

評判が良かったので鑑賞したけど大スクリーンで観ておいてよかった。(「インターステラー」の娘役の子が主演声優と知ってにわかに興味が湧いたのは内緒。) 小学生くらいの女の子の抑圧と成長、という方向性としては「インサイドヘッド」に近いものがあるけれ…

「黄金のアデーレ 名画の帰還」感想 “私たちを忘れず、幸せを取り戻して"

オーストリアが誇る名画家クリムトが自身の伯母を描き、のちにナチスに奪われた絵画を取り戻すため、60年後老女が政府を相手に裁判を起こす実話映画。 挿入される第二次世界大戦中の悲劇的描写とは裏腹に、現代パートのウイットに富んだ老主人公と新米弁護士…

映画「恋人たち」感想 <決して誠実ではない映画>

かなり評判が良かったので期待をして鑑賞。 うーん決してつまらないわけではないけれど、上手くはないよな。映画的に下手クソなところに目を瞑って観客側から歩み寄って「メッセージを拾いに行ってあげる」のはあまり好きじゃない。 そもそも世の中には「群…

「コードネーム U.N.C.L.E.」感想 <このチームにまた会いたい!>

<このチームにまた会いたい!> 歴史好きなんで、東西冷戦下のアメリカとソ連のスパイがチームを組むっていう「ありえない」けど夢のある設定だけでテンション上がった。ありがちな凸凹コンビではなくて、どっちも超一流っていうのがよかったなー。 マジメに…

映画「バック・イン・タイム」感想 <バックトゥーザフューチャー30周年記念ドキュメンタリー>

<未来(フューチャー)とは> 劇場鑑賞じゃなくてNetflixで観たんだけど、2015年10月21日の盛り上がりとは裏腹に、このドキュメンタリーは全く話題になっていないので。 Kickstarterにて資金募集をしていたので素人クオリティなのでは、と若干心配だったけど、…

「悲しみの忘れ方 DOCUMENTARY of 乃木坂46」感想 <娘を持つ親世代にこそ響くのでは>

某冠番組を毎週観ている程度の知識です。 最近では珍しくない「アイドルドキュメンタリー」今回 どういう切り口を提示するか心配だったけど、この映画は、アイドルグループの結成から現在までの歩みにメンバー母親の語り(娘への想い)を織り込むという「着想…

映画「ピッチパーフェクト2」感想

“あなたはわたしの光、一緒なら夜も怖くない" 良心的で丁寧な音楽賛歌なのは変わらず、パワフルさも増していて満足。王者ベラーズをどん底に突き落としてからの、より巨大な敵、新たなメンバー加入、世界戦とプロットのインフレも堅実で感心。そしてライバル…

映画「エベレスト3D」感想

<保険会社の保障のギリギリまで、俳優はアシスタントなし、荷物も自力で運ぶ、実際にマイナス30度の高山でスタッフ共々、"命の危険"を感じながらの撮影> 上述の通りCGも極力使わず「本当に」命がけの撮影だったそうで、それならもうそれだけで満足。CGバリバ…

「WE ARE Perfume WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」感想 "Keep Climbing (今より上のさらに上へ向かって)"

新曲が出ればチェックする程度のライトファンだけど楽しめた、最高。 彼女たちが世界で戦う姿は、劇中に登場するデルタ航空の標語の通りだ。 有名歌手とはいえ、20代の女の子3人がひたむきに世界に挑む姿には不覚にも何度もウルっとしてしまった。ライブ面で…

映画「メイズランナー2」感想

<全力疾走すればそれでいいの?> 「メイズ(迷路)」を2回やれとは言わないけど、「タイトル」にも入れているくらいなんだから、そこは迷路要素の何らかの継承はすべきだった。 謎の空間に主人公と一緒に突然ぶち込まれる感覚を覚えるスピード感ある展開、「壁…

映画「図書館戦争 THE LAST MISSION」感想

<シリーズファン向けにしても難あり> 前作は、「図書館を巡る攻防」っていう限定的舞台が邦画の予算規模にちょうど合っていたし、メディア規制、自衛隊など社会風刺をしながら大真面目にアクション、ラブコメ、現代ファンタジーをやりきったという点において…

映画「ジョン・ウィック」感想

<俺たちの観たかったキアヌリーブス!> 「キアヌ完全復活」と聞いて反応した方はぜひ劇場へ。エレガントでダイナミックなアクションと銃術、銃、マスタングがたっぷり堪能できます。あなたが最高なのは確定なので、もういくらでも公園でオフの姿撮られちゃっ…

映画「マイ・インターン」感想

<想像通りの、楽しい二時間> 他の方も評価している通り、全体を通底するハッピーな雰囲気、ロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイの演技とそのキャスティングの贅沢さ、脇役、子役もそれぞれ魅力的。想像通りの楽しい二時間を過ごせた。決してそれらの実現…

映画「サヨナラの代わりに」感想 <主演、ヒラリー・スワンク!>

いわゆる難病モノとしては今年「きっと星のせいじゃない」「博士と彼女のセオリー」「アリスのままで」に続いて4作目だけど、それらと並べても良いくらいの映画でした。("出尽くした"と言われるジャンルでのそれぞれのアプローチの違いを見比べると面白い) …

映画「岸辺の旅」感想

評判よかったので鑑賞。 国内ロケでありながら品位のある映像、小松政夫さんをベッドに運んだシーンはじめセンスの良さ、細部の繊細さはわかるけど、どうしても中途半端なヒューマンドラマ、中途半端な奇譚話にしか思えず。 どこ行っても〇〇だらけ、あなた…

映画「バクマン。」感想

<週刊少年漫画誌の凄さと恐ろしさ> 原作未読、ただいわゆる黄金期には毎週ジャンプを読んでいた人です。 期待せずに観に行ったら小中学生から大人まで観る漫画原作映画というエクスキューズはありながら良かった。友情努力勝利を具現化した青春モノ映画と…

映画「ピエロがお前を嘲笑う」感想

"大胆にやれば、周りはひれ伏す" 惹かれない訳がない、ポスターと邦題のセンスに惹かれて鑑賞。ただ宣伝文句で「マインドファック」とか銘打ってハードルを上げたのは悪手だった。 「ギーク野郎のハッキングによる成りあがり」がメインでありながら、「人間…

映画「心が叫びたがってるんだ」感想

"言葉は人を傷つける、口に出したらもう戻らない" と聞いて「うっ!」とならない人はいないはず。「言葉と青春」という着想が新しかった。 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」のスタッフ最新作と聞いて、あれは良い部分もあるけど「やり過ぎ」な部…

映画「アントマン」感想

"誰にとっても親子関係は複雑なもので、追求する価値があるし、この物語でもっとも共感できる部分でもあるわ"(エヴァンジェリン・リリー) 「アリのように小さいサイズで戦うヒーロー」なんていくら<外さないMARVEL>といえど”さすがに"荒唐無稽だろと思ってい…