東京映画帝国

”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評/あらすじ]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

映画「ブリッジ・オブ・スパイ」感想 <規則を守ることがアメリカ人の証である>

"誰であろうと公正な裁判を受ける権利がある。そして、憲法に忠実であることが、アメリカ人がアメリカ人たる根源である。規則を守ることがアメリカ人の証である"

"冷戦下スパイ交換の顛末"という性格上、わかりやすい娯楽性は薄いけど、法廷劇、人間ドラマ、外交的駆け引き、トムハンクスのジョークやギャグシーン(笑)など「ビター」な面白さが詰まっていて見応えのあるいい映画だった。

まず自由と正義の国アメリカですら、公正さのために敵スパイの弁護をする弁護士に嫌がらせがあったり、決して一枚岩ではなく、心ある少数の人の「不屈の精神」で何とか保たれているんだなと知ることができた。そして米国の代名詞のような「法の下の平等」「自国民は自力で救出する」ことが世界ではさほど、米国ですら当たり前でない現在だからこそ意味がある映画。時に嘲笑われながらも「規則を守ることがアメリカ人の証である」こう世界に言い続けるって簡単じゃない。なんていうか一周回ってアメリカ・民主主義万歳って言って行かなきゃいけない時代が来た感じなんだよね。

個人的には、東ドイツ側の交渉担当の今話している相手が実際はソ連の高官なのか何なのか「本当は誰か」わからないっていう描写が新鮮だった。あと「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」のように駆け引きの末の「結末」が、本当にハッピーエンドと喜んでしまって良いのか悪いのか、最後に字幕で出るまで分からない緊迫感がよかった。あとアベル役のマーク・ライランスの抑制の効いた演技が最高、監督の次回作にも出るようで期待。

「戦火の馬」とか「ターミナル」とかファミリー向けにエンタメ方向に振り切ることの多い監督でその甘さが苦手だったけど、今回は甘さ成分ほぼ無しでビシっと決めていてスティーブンスピルバーグ監督の本気を見た。

 

☆4.0


町山智浩が映画『ブリッジ・オブ・スパイ』を語る


Bridge Of Spies Trailer

盛り気味の日本版テレビCMよりいい。