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”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にあらすじなし、ネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

"音楽家は楽器、私はオーケストラを指揮する"「スティーブ・ジョブズ(2015)」ネタバレなし感想

メジャー感の少なかったアシュトン・カッチャー版とは違い、ユニバーサルスタジオ配給、レジェンダリー・ピクチャーズ製作のマイケル・ファスベンダー版。ついにジョブズ自伝映画の「真打ち」が来るかと思いきや、こっちの方が相当トリッキーで、一見さんお断りの有名歌手没後の未発表音源集アルバムみたいだったのに驚き。

 

ファンからすると謎の多い「実娘」と「仕事上の妻」の関係を描くのかと唸る部分もあり、地力の高さは伺えるものの、分かりやすいキャッチーさは無いので万人受けしないし、完成度に疑問も残る。未発表音源だから、その人が生きていれば表に出ない部分なので、見てはいけないものを見てしまったチョンボ感も否めず。(その論法で行くと、アシュトン・カッチャー版はよくある諸事情で「みんなが知ってる曲の微妙に抜けた」ベストアルバムみたいな感じ。)

 

中身は彼の仕事よりも、最近多い「偉人の私生活が実はこうでしたモノ」ま、この人を題材に映画にしようとしたら作り手は「家族関係と人間性の破綻っぷり」に触れたくなるのはわかるけど、逆にそれもセオリー通りすぎ。この映画は実はこうでしたと修羅場、修羅場をドヤ顔気味につるべ打ちするばかりでエグさが強い。まぁ関係者に取材していけばこういう話も出てくるんだろうけどそこはやっぱりこの人を語る上でどうでもいいところだと思う。

 

にしても物語として「陰と陽のバランス」が悪い。舞台が製品の完成している発表会直前のみなので、ウォズニアックが例えた彼の「最高の指揮者(プロデューサー)」、宣伝コピーで言われてる所の「口先ひとつで世界を変えた男」(←この言い回しはクソ)、「神の交渉力の持ち主」としての一面がほとんど描写されていないのはフェアじゃない。(この辺はアシュトン・カッチャー版の方が作品として不完全ながらも上手かった。)

 

しかしながらエグすぎると書いた、時に考え方の違いから罵り嫌い合う戦友・関係者たちも、その人の才能や能力は認め、しかるべきタイミングでは顔を合わせ思い出話をする「大人の友人関係」っていうニュアンスを映像の中で残していたのは良かったと思う。ジョブズのウォズを守る言葉にグッと来た。

 

あと個人的には「神の交渉力」をもつ彼も、娘はうまく説き伏せられず凡人に成り下がり、なんとか気を引くために娘の好きな話題を振る姿がベタながらも、人間味があってかわいらしくニヤリとしてしまった。娘三人こそが助演女優賞だと思うけどなー。

 

ここまで一見さんお断りとは…とやや引きながらも、ストレス、ストレスの先の屋上でのラストエピソードがすごいよかったし、彼にとって象徴的な3つの発表会のそれぞれ直前40分に物語をすべて詰め込み「写真ではなく絵画のように仕上げた」という、劇作家出身アーロン・ソーキンのパワーとスピード感のある脚本の妙はさすがで、値引き材料はありながらも一見の価値はあり。

 

☆3.5

 


映画『スティーブ・ジョブズ』


iPhone発表スティーブジョブズプレゼン(日本語字幕付き)

今回は皆無だったけど、一番好きなプレゼン。


町山智浩 映画「スティーブ・ジョブズ」ダニー・ボイル監督 たまむすび

 

監督:ダニー・ボイル

製作:マーク・ゴードン、ガイモン・キャサディ、スコット・ルーディンダニー・ボイル、クリスチャン・コルソン
脚本:アーロン・ソーキン
原作:ウォルター・アイザックソン 『スティーブ・ジョブズ
撮影:アルウィン・H・カックラー
編集:エリオット・グレアム
音楽:ダニエル・ペンバートン

キャスト
マイケル・ファスベンダー/スティーブ・ジョブズ
ケイト・ウィンスレット/ジョアンナ・ホフマン
セス・ローゲン/スティーブ・ウォズニアック
ジェフ・ダニエルズ/ジョン・スカリー
マイケル・スタールバーグ/アンディ・ハーツフェルド

原題 Steve Jobs
製作年 2015年
製作国 アメリカ
配給 東宝東和
上映時間 122分
映倫区分 G

受賞歴

第88回 アカデミー賞ノミネート(2016年)
第73回 ゴールデングローブ賞ノミネート(2016年)