東京映画帝国

”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評/あらすじ]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

「マネーショート」感想 <なるほど、わからん>

絶対に安全と言われたアメリカの住宅ローンの崩壊を見抜き「暴落するほう」に賭けた男たちの話。

 

噂通り冒頭から「スティーブ・ジョブズ」「ヘイトフル・エイト」に匹敵かそれ以上に(やや専門的な)セリフ、セリフの応酬で体調や予習が万全でないと置いていかれること必須。ただ馴染みのないジャンルにしがみつくように話を追うのはストレスでもあり、見応えもありで個人的には楽しめた。

 

たしかに都度ごとにビギナー向けの「ニヤリとできる演出での説明」はあるんだけど、それぞれものの十数秒で終わってしまう上に、MBSCDOCDSなど似ている略語が多く、どうしても難しい制度を少しわかりやすくした程度なので、漫然と説明を聞いても「なるほど、(でも)わからん」になりかねないから注意。より楽しむためには上記の3略語とサブプライムローンとはなんぞや、というところは事前に頭に入れておくのをおすすめ。

 

お話の中身はさすがアカデミー脚色賞受賞作だけあって、かなり濃密かつ決して派手ではない話を実力派俳優のキャスティングはじめ、4つの話をクロスさせて緩急をつけるなど様々な工夫で、「よくもまぁ娯楽作に仕立て上げたな」と終始感心しきりだった。

 

惜しむらくは当時のポップカルチャーとか製品イメージ映像の挿入が雑だったり、臨場感を出すためにブレのある手持ち撮影を多用したり素人っぽい演出・効果が目につく点。その辺はわざとなんだろうけど、ハリウッド映画なんでその分上述の制度の説明とかで、アニメーションやCGを使うなどビジュアル的にもっとリッチさや切れ味がほしかった。あとこのバブル崩壊の「破壊力」の描写も非アメリカ人からすると弱いような。

 

ネタバレにもならないけど彼らの「大逆転」は、途方もない数の人の「敗北」の裏返し。この問題の本質的、実感的に「わかる」ことは日本人には難しいかもしれないが「今、社会で起きていることにもっと厳しい目を向けろ」という監督のインタビューでの言葉は遠い国の人間である自分にも重く響いた、

 

お前は「食い物」にされていないか?と。

 

☆4.0(傑作)

 

machinaka.hatenablog.com

↑たいへんわかりやすい解説記事です。

 


町山智浩 映画「マネーショート 華麗なる大逆転」ブラピ出演 たまむすび


『マネー・ショート 華麗なる大逆転』予告編

 

スタッフ
監督アダム・マッケイ

製作ブラッド・ピット
デデ・ガードナー
ジェレミー・クライナー
アーノン・ミルチャン

原作 マイケル・ルイス
脚本 チャールズ・ランドルフ アダム・マッケイ
音楽 ニコラス・ブリテル
キャスト
クリスチャン・ベール/マイケル・バーリ
スティーブ・カレル/マーク・バウム
ライアン・ゴズリング/ジャレッド・ベネット
ブラッド・ピット/ベン・リカート

 

原題 The Big Short

製作年 2015年
製作国 アメリカ
配給 東和ピクチャーズ
上映時間 130分
映倫区分 G

あ、パンフレットは近年稀にみるほどダメダメでした。解説・コラム一本もなしとか見たこと無い!