東京映画帝国

”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評/あらすじ]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

「アーロと少年」感想 <そもそもあなたはもうターゲットではないのかも?>

 

事前に評判を読んでいて、あまり期待せずに「頭を空っぽ」にして観たので自分は満足。これは"話がありきたりで…”とか、"人間が犬みたいに描かれていてちょっと…”とアタマで考えてしまう層はお呼びじゃないんだなと。

 

「現実よりも美しくなければ意味がない」というどうかしている意気込みのもとに作られた超絶写実的で美麗なCG背景とは裏腹に、(フックとなるフレッシュなシーンは数あれど、)ストーリーやキャラクターはこれでもかというほどにシンプル、直球でたしかに物足りなさがあり「レベル」を一つ下げてしまった感はある。

 

けれど自分にはこれは、(大人も観れる、やや高尚なCGアニメも増えている中)「われわれはあくまでも子どもたちがターゲットで、彼らに”ワンダー"を届けるのが目標なんですよ」という意思表示で、あえて「子供向け」に揺り戻しているのを強く感じた。マーベル映画ほどでないにしろ、高くなってしまったハードルからだんだんと複雑になりつつあったピクサースタジオ作品の「仕切り直し」の時なのかなと考えると納得。

 

これを観た後では、「蛇足でしかない」と感じていたジョン・ラセター監督自ら「トイ・ストーリー4の制作開始」っていう報にも合点が行く。あくまで「子どもたちのため」なんだろう。というわけでピクサーがいわゆる「子供向け」に振り切る路線はまだ続きそうな気がする。大人にとっては物足りないだろうし、子供向けだからといって「何よりもストーリーありき」と言っていたピクサーが「レベル」を一つ下げてしまうのは功罪あるだろうけど。

 

そんな考えに至ったのは新宿の劇場の夜の回でありながら、なんとか少ないながらも子ども客がいて、大人目線では前後の繋がりとか考えてしまうシーンも終始「キャッキャ」と子どもたちの笑い声が聞こえてきたこと。あとやっぱ「キッズムービー」は子どもに混じって観ないとダメだなーと自戒。

 

「子供向けに振り切ってる」と言いつつあれだけど、原題が親が子どもに掛ける言葉の決まり文句「GOOD DINOSAUR(=GOOD BOY=いい子ね)」なように、物語中の親恐竜たちの「親目線」、ピクサーのオタクアニメーターらも20年目で子どもの親になる人も増えてきたという「もう一つの親目線」の文脈も理解・感情移入できないとしっくりこないのかも。ただその辺は「インサイド・ヘッド」同様バランスが悪く、親側からの「親目線の押し売り感」は否めず上手くいってないように感じる。

 

あと個人的には超写実的な背景に、非現実的なキャラクターが違和感なくマッチしていることが何気にすごいなと思った。ライティングなのか、カラーリングの妙なのか技術的なことはわからないけど。この背景を見て今の子どもがどう感じるか訊いてみたいなー。

 

童心に返って、頭を空っぽにして観てください。

 

☆3.5

 


映画『アーロと少年』予告編

 

監督ピーター・ソーン

製作デニス・リーム

製作総指揮ジョン・ラセター
リー・アンクリッチ
アンドリュー・スタントン

キャスト(声の出演)
レイモンド・オチョア/アーロ
ジャック・ブライト/スポット
ジェフリー・ライト/アーロのパパ
フランシス・マクドーマンド/アーロのママ
マーカス・スクリブナー/バック

原題 The Good Dinosaur
製作年 2015年
製作国 アメリカ
配給 ディズニー
上映時間 93分
映倫区分 G