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”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評/あらすじ]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

<傑作、掘り出し物を見つけた!>すれ違いのダイアリーズ ネタバレなし感想レビュー

満点。海外映画で「あーいい映画を観たな」と爽やかな気持ちだけで劇場を出たのは久しぶり。


高い志で面接を受けるも田舎の水上学校に赴任させられた新米教師ソーン。何か変な自己紹介をする生徒たち。不慣れなりに奮闘するも生徒からは何かにつけて「エーン先生はそんなこといわなかった!しなかった!」と前任の女性教師エーンの名前を出され何かと比較される。訝しんでいるとある日黒板の上から前任のエーン先生の日記を見つけ、同じように水上での日々に悩み、もがいていたことを知り、自然と思いを募らせるように…というお話。

新米教師のポップな成長物語に、王道ラブストーリー、(時空を越えるまでは行かないけどミニマムな)タイムトラベルモノ的な要素も。過去と現在が入れ替わって話が進むけどサスペンスではないから思わせぶりではなく小気味がよい。そして熱心でコミカルなソーンはもちろん、肝心のエーン先生もきれいで明るくオープンな性格でとっても魅力的。これ観客みんなが大好きになっちゃうやつーー。いつ二人の世界が交差するのかドキドキしながら観てしまった。

でもそれだけじゃダメで、田舎の河の水上学校という美しくも現実離れしたロケーションによるマジック、子役の可愛らしくいきいきとした演技・子役のキャラに合わせて書いたという脚本、ゼロから作ったという水上学校の美術・衣装のセンスの良さなどの「化学反応」があいまって、タイの「発展途上国」という(鑑賞前の)ネガティブなイメージが、払拭、プラスになったことが大きな勝因、マジックだった。良い要素が重なってのものとはいえ「タイ」のイメージがだいぶ変わったよ。

爽やかな気持ちになったとはいいつつも「子どもイコール漁の働き手だから学校には行かせないし、卒業しても漁師になるんだから教育はいらないだろ」という途上国ならではの問題も描かれており、「そういう人たちにとって教育とは、学校とは何なのか」というテーマにも作品全体で答えを示していて思い出すといろいろ考えてしまう。

小さい公開規模に反しての当たり感、掘り出し物感は「百円の恋」「はじまりのうた」に近い。きっと今後何度も見返したくなるとても魅力的な映画に出会った。

 

☆5.0

 


『すれ違いのダイアリーズ』予告編