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東京映画帝国

”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にあらすじなし、ネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

映画「アリスのままで」感想 <"予告で筋書きが読めるような"映画がなぜ評価され、賞を受賞しているのか?>

 

それを確かめるために鑑賞。食傷気味の難病モノではあるけど実際にALS闘病中だった監督作だけあって一味違った。”症状のショッキングさなどで泣かせの安易な盛り上げをしない”、”三幕構成だとか物語的なセオリーを無視”、”親切にすべてを描写しない"というような徹底したルールを課すことによって、お話に安定した「リアリティ」を生み、観客に上映時間を忘れて、どこにでもいそうな家族の数年を覗き見ているかのような感覚を抱かせ、不思議と胸に残る。そしてどこまでも発病する本人の目線で物語が進む事。そこがこの映画のオリジナリティだ。

つまり旦那は愛妻家だけど、ドラマみたいに簡単に「仕事を辞めて介護に専念」なんてしないのが現実的でいいし、次女が母親と一緒に暮らす決心をしたいきさつなど様々な部分が省略されていて「わかってるだろ?」と言わんばかりにいちいち描写しないのもいい、「症状がいい日もあるし、悪い日もある」というようにアリスの症状の進行も親切に「インフレ」しないし、それでいちいち泣かせようともしない、観客を信頼した「品位」の高い映画だと思う。

ややもすると下手クソだの緩慢だの言われるアプローチだけど、それでも緊張感・集中力を失わないのは主演「女優ジュリアン・ムーア」の絵力、存在感があったからこそだろう。その上、衣装、美術、撮影もよかった。症状を表す撮影技法も前半のパンチとしてはよかった。そして娘役クリスティン・スチュワートとケイト・ボスワースが美しいのをはじめ配役もナイス。

そしてあの締め方。号泣とかではないけど、すぐに座席を立たずに余韻に浸りたい映画だった。

"アルツハイマーでコミュニケーションがとれなくなっても人格は失われないんだ"
ウェストモアランド監督

 

☆4.5