東京映画帝国

”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評/あらすじ]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

「黄金のアデーレ 名画の帰還」感想 “私たちを忘れず、幸せを取り戻して"

 

オーストリアが誇る名画家クリムトが自身の伯母を描き、のちにナチスに奪われた絵画を取り戻すため、60年後老女が政府を相手に裁判を起こす実話映画。

挿入される第二次世界大戦中の悲劇的描写とは裏腹に、現代パートのウイットに富んだ老主人公と新米弁護士の明るいドタバタ裁判劇のバランスがよく、丁寧で卒なく作られていると思う。

ただ第二次世界大戦ユダヤ人迫害って、許されないことだし同情すべきだけど、あまり「ド直球」に観せられると、逆にユダヤ人の様々な歴史的事情を思い浮かべてしまったりして手放しに感情移入できない部分も。

実話モノなので仕方ないけれど、予備知識がなくとも映画としては早々に「話が見えてしまった」上にそれを補う「何か」もなかったのが残念。

 いくら個人所有とはいえども「オーストリアの至宝」といわれる名画の居場所として本当にあれでよかったのかとも。

 それでも上述した、ラストの家族のセリフには落涙…。この言葉を胸に彼女は闘っていたのか。

 

☆3.5