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東京映画帝国

”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にあらすじなし、ネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

映画「母と暮らせば」感想 <戦中、戦後を知っている映画監督があと何人いるだろう>

 

評判がいいのと「小さいおうち」から再びの山田洋次監督&黒木華出演ということで観てきた。

まずこの超ベテラン監督が、お話の下敷きにサラッと「長崎、キリスト教、原爆」っていう誰しも言わないようにしてるネタをぶっこんできたのはすごいなと(笑)「日本におけるキリスト教の代名詞のような街にキリスト教国が原爆を落とした」ってよく知らない外国人が観たらギョッとするんじゃないだろうか。劇中の一節「小倉に原爆投下のはずが天候不順で長崎になり、長崎も同様に中止になりかけたところ、一瞬だけ晴れ間が差して投下された。」論理的に関係性は無いにしてもこの文脈で改めて知らされると色々考えてしまうなー。

 

お話は「原爆で死んだ息子が数年後母に会いに帰ってくる、そして恋人のことも気がかり…」という普遍的なもので、親と子両方の気持ちのわかる親世代はじめ、肩肘張らずに誰しも響くものがあると思う。そういう話の本筋上、基本的に会話が中心なんだけど、当時の生活風景とか、所作がいちいち新鮮だし、吉永小百合二宮和也黒木華、上海のおじさん(笑)はじめ実力派俳優だらけなだけあってその演技の競演にずーっと退屈しなかった。中でも二宮くんのちょっと癖のある演技と、この監督独特の古くさいセリフ回しの若者キャラが当時の時代感にちょうどマッチしていて本当にそういう人物がいるかのようだった。

 

このタイミングでこう撮るかという感じの迫力の映像と音響による原爆描写が新鮮だった。かといって政治的に何かを批判するわけでもなく「戦争をして身近な人が一人死ぬってどういうことか」ってことを物語の中でさらっと見せてくれたのが新鮮だった。戦中を知っている映画監督に、あの戦争を伝えるってそんなに肩肘張らなくていいんだなって教わったかのよう。観てよかった。

 

☆4.0

 


映画『母と暮せば』予告