「オデッセイ」感想 "科学の力で乗り越える!"
原題THE MARTIAN(火星の人)からけったいな邦題に変更、ゴールデングローブ賞の受賞(コメディ部門)でコメディって初めて知って、色々見くびっていたけど、そこはリドリー・スコット監督だけあってしっかり「ゼログラビティ」「インターステラー」に続くドラマ性のある正統派宇宙大作に仕上がっていて、大満足! 物語の都合上、ド派手なアクションとかはないけど、室内でのほぼ非CGのセット撮影が多い分、逆に最近トレンドの「マッドマックス怒りのデスロード」、「スターウォーズ フォースの覚醒」などの"アンチCG"の流れにもバッチリ乗っていたし、アクションは少なくとも何だかんだでラストシークエンスには「ザ・ウォーク」に続いてまたも"手に汗握った"し最高だった!
前述の二つの宇宙映画との違いは、まずマット・デイモン演じる主人公の根アカ的明るさ、観ている方が元気をもらえるような「かなりの前向きさ」は「キャッチミー・イフユー・キャン」レオナルド・ディカプリオの天才詐欺師や「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」クリス・プラットのスターロードみたいで、シリアスな状況もありながら観ていてずっと楽しかった。やっぱりポジティブな筆致の映画はいいね。
もう一つはパワーオブラブでモヤッと話を畳んだ「インターステラー」とは違い、あくまで問題を理詰めで解決していく<科学礼賛・科学肯定>で押し通したこと。文系的に政治的しがらみや感情に流されずに、現実をみて中国との協力をするなど、理系ならではの「イデオロギーの無さ」が「この映画のイデオロギー」なんだと思う。そして「同じ地球人の仲間を見捨てずに一致協力して救い出す」というのも、千数百年前の宗教絡みでまだゴチャゴチャ揉めている今の時代へのアンチテーゼとして狙ってるのかと思った。
あと劇中の技術者たちが受ける「不可能?でもやるんだよ」的な無茶ブリを"知恵と努力と力技"でなんとか解決していく様は、プロフェッショナルモノ映画としても面白いし、社会人なら誰しも共感できるポイントでしょう。
個人的ツボは背中にGoPro、腕にスマホっぽいガジェットっていう「SF映画」らしからぬ小道具の微妙なダサさ。でも「これは限りなく現代と地続きのお話しなんですよ、という時代設定と狙い」を誰にでも分かりやすく見せるために「旧来のSF映画で唯一想像できなかった」といわれる鬼門の機器"スマホ"をあえて利用したのが面白い。その反面、宇宙服は最近のSF映画のトレンド通り、スリムで洗練されたスタイルなのが、絶妙だ。
あ、ジャガイモ買って帰ろう。まさか映画を観てジャガイモに愛着を持つ日が来るとは…。
☆4.5
↑ナニコレ、知らなかった!手が凝んだ特別映像。