東京映画帝国

”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評/あらすじ]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

<噂通りの森田剛独壇場>ヒメアノ~ル ネタバレなし感想レビュー

<>、そのハマリ役ぶりとタイトルバックのインパクトだけでも観る価値あり。

ただイマイチ乗れなかったのは、ショッキングなシーン満載なだけにも見えてしまうこの作品をなぜ映画化したのかがぼんやりしていたから。

森田がおかしくなったのは、単純にっていうのも変だけど○○○が原因なのか?もともとそうだったのか?前者だとしても現場で○○○するもんなのか?とか自分の知識不足と解釈に幅をもたせた風の描写で、イマイチはっきりしないのがもやっとする。そもそもはっきりするものなのか?とか、とはいえはっきりしないものとして考えずに突き放していいのかってのもあるし。原作にはあったという森田の葛藤的描写がどうも気になるから、原作ではどうなのか読んでみたい。

ヒロイン佐津川愛美は名前を知らなかったから期待してなかったけど、前田敦子有村架純をあわせたようなかわいらしさで終始魅力的だったし、(まだまだ売出し中だろうに)ベッドシーンもそこそこ「頑張って」いたりと、終わってみれば納得のキャスティングだった。

あの森田剛の「殺しちゃっていい?」と「麦茶ー!」の声のギャップなー、あれは彼じゃないとできなかった。岡田准一生田斗真並にジャニーズの実力派として評価、今後も映画に呼ばれ続けるんじゃないだろうか。
 
☆3.0
 


ヒメアノ~ル PV

 

ヒメアノ~ル 豪華版 [Blu-ray]

ヒメアノ~ル 豪華版 [Blu-ray]

 

 

 

“あの頃の思い出はいつも心の中にある"若葉のころ ネタバレなし感想レビュー

“あの頃の思い出はいつも心の中にある"

「あの頃、君を追いかけた」「共犯」がよかった”台湾"の学園青春映画、この美しいポスタービジュアル、邦題ときたら観に行かないわけにはいかない。

母の事故をきっかけに、母の17歳の頃の、学生らしい悪行に明け暮れる男子生徒とのボーイミーツガール的な淡い恋模様・青春の日々の回想と、現在パートで同じく17歳の娘の似たような恋模様が交互に描かれる。監督がMV出身だけあって要所要所で挿入される、青春映画らしい梅雨から初夏の風景を水や雨を多用して美しく切り取った、瑞々しくもエッジの効いた撮影は流石だった。

ビージーズの名曲がリンクする現在過去と二層構造の青春恋愛劇、一本で二度おいしいと思いきや、「お互いに気にはなっているけど、少しのすれ違いからいがみあってくっつきそうでくっつかないパート」がとても長い上にテンポが悪く、主人公の支離滅裂な行動も目立つ。どちらも意外と観ていてちっとも楽しくないし盛り上がらないのだ。天は二物を与えずか、ビジュアルセンスは素晴らしいのにもったいない。

17歳の女主人公の部屋にはドラえもんやnon-noの嵐ポスターがあってニヤリ。台湾映画はちょいちょい日本ネタがあるのがありがたいというか、それがもう自然なのかなー。

ただテンポに難ありで終始フラストレーションを感じながらも、その先のあの「エンドロール」で少し泣けてきてしまった。ずっと観ていたかった…。
 
☆3.0
 

“あの頃の思い出はいつも心の中にある"若葉のころ ネタバレなし感想レビュー

“あの頃の思い出はいつも心の中にある"

「あの頃、君を追いかけた」「共犯」がよかった”台湾"の学園青春映画、この美しいポスタービジュアル、邦題ときたら観に行かないわけにはいかない。

母の事故をきっかけに、母の17歳の頃の、学生らしい悪行に明け暮れる男子生徒とのボーイミーツガール的な淡い恋模様・青春の日々の回想と、現在パートで同じく17歳の娘の似たような恋模様が交互に描かれる。監督がMV出身だけあって要所要所で挿入される、青春映画らしい梅雨から初夏の風景を水や雨を多用して美しく切り取った、瑞々しくもエッジの効いた撮影は流石だった。

ビージーズの名曲がリンクする現在過去と二層構造の青春恋愛劇、一本で二度おいしいと思いきや、「お互いに気にはなっているけど、少しのすれ違いからいがみあってくっつきそうでくっつかないパート」がとても長い上にテンポが悪く、主人公の支離滅裂な行動も目立つ。どちらも意外と観ていてちっとも楽しくないし盛り上がらないのだ。天は二物を与えずか、ビジュアルセンスは素晴らしいのにもったいない。

17歳の女主人公の部屋にはドラえもんやnon-noの嵐ポスターがあってニヤリ。台湾映画はちょいちょい日本ネタがあるのがありがたいというか、それがもう自然なのかなー。

ただテンポに難ありで終始フラストレーションを感じながらも、その先のあの「エンドロール」で少し泣けてきてしまった。ずっと観ていたかった…。
 
☆3.0
 

<傑作、掘り出し物を見つけた!>すれ違いのダイアリーズ ネタバレなし感想レビュー

満点。海外映画で「あーいい映画を観たな」と爽やかな気持ちだけで劇場を出たのは久しぶり。


高い志で面接を受けるも田舎の水上学校に赴任させられた新米教師ソーン。何か変な自己紹介をする生徒たち。不慣れなりに奮闘するも生徒からは何かにつけて「エーン先生はそんなこといわなかった!しなかった!」と前任の女性教師エーンの名前を出され何かと比較される。訝しんでいるとある日黒板の上から前任のエーン先生の日記を見つけ、同じように水上での日々に悩み、もがいていたことを知り、自然と思いを募らせるように…というお話。

新米教師のポップな成長物語に、王道ラブストーリー、(時空を越えるまでは行かないけどミニマムな)タイムトラベルモノ的な要素も。過去と現在が入れ替わって話が進むけどサスペンスではないから思わせぶりではなく小気味がよい。そして熱心でコミカルなソーンはもちろん、肝心のエーン先生もきれいで明るくオープンな性格でとっても魅力的。これ観客みんなが大好きになっちゃうやつーー。いつ二人の世界が交差するのかドキドキしながら観てしまった。

でもそれだけじゃダメで、田舎の河の水上学校という美しくも現実離れしたロケーションによるマジック、子役の可愛らしくいきいきとした演技・子役のキャラに合わせて書いたという脚本、ゼロから作ったという水上学校の美術・衣装のセンスの良さなどの「化学反応」があいまって、タイの「発展途上国」という(鑑賞前の)ネガティブなイメージが、払拭、プラスになったことが大きな勝因、マジックだった。良い要素が重なってのものとはいえ「タイ」のイメージがだいぶ変わったよ。

爽やかな気持ちになったとはいいつつも「子どもイコール漁の働き手だから学校には行かせないし、卒業しても漁師になるんだから教育はいらないだろ」という途上国ならではの問題も描かれており、「そういう人たちにとって教育とは、学校とは何なのか」というテーマにも作品全体で答えを示していて思い出すといろいろ考えてしまう。

小さい公開規模に反しての当たり感、掘り出し物感は「百円の恋」「はじまりのうた」に近い。きっと今後何度も見返したくなるとても魅力的な映画に出会った。

 

☆5.0

 


『すれ違いのダイアリーズ』予告編

<事件の真相より、社内政治ドラマが多めの前編> 「64ロクヨン 前編」ネタバレなし感想・レビュー

 

NHKドラマ化での評判の良さを聞いていた一作、これだけ豪華俳優で駄目ってことはないだろうとかなり期待して鑑賞。結果、観に行ってよかった!演技の素晴らしかった俳優は数えきれない!これは日本映画サスペンスの傑作の一つになるはず。かるた映画もいいけど、こういう骨太映画にも光が当たらないと。(後編まだだけど!)

 

同じ原作者作、日航機墜落事故追う記者を扱った「クライマーズハイ」のように、メインでドーンと出ている事件、「昭和64年の少女誘拐殺人事件の真相」というよりドロッとした社内(警察署内)政治ドラマが多めで、前者を期待すると肩透かしを食う。そういう気持ちに切り替えて観てれば十分楽しめるし、やっぱ組織に板挟みになるサラリーマンモノは安定の面白さ、熱さだよなー。(でも2年前に流行ったあるTBSテレビの日曜ドラマの影響をモロに受けてるのがなんだかなー。)

 

「悪名高い」前後編システムだけど、前編だけでもある意味完成してたし、(あらすじをよく読んでなかったから)前編のラスト、エンドロール直前で「おおお!これは絶対に後編観なければ!」って思うほど後編への「引き」もあった。後編でストーリーはどうなるか分からないし、推測していくと危うい所もあるけど、横山秀夫作だからあんまり心配してない。出演する俳優陣が超豪華なだけあった。

 

あとこれを観ると「学級会」と形容したくなるような噂の「公的機関と記者クラブの二者の伝統的なズブズブ感と面倒くささ」がなんか分かったっていうのは収穫。原作者が新聞記者出身ならではのリアリティだと思うけど、つまりは現実にこれに近い「学級会」が行われてるってことだよなー。中盤、記者クラブの記者が「めんどくさい」のをずっと見せられるのは苦痛だったけどこれは映画のせいじゃないもんな(笑)

 

記者クラブの本部長室への抗議文を持っての突撃シーン、と後半の主人公三上の新聞記者十数人を向こうに回しての演説シーンは、(シーンそのもののバカバカしさはありながらも)俳優対俳優の演技と演技のぶつかり合いによる迫力を十分に感じた。これは主演俳優・佐藤浩市が若い記者役俳優たちに「潰すつもりで来い」と発破をかけたのも一因だと知って納得。パンフレットのインタビューを読んでいても、彼の「座長」としての意識の高さ、責任感がこの映画全体の張り詰めた空気を作り出すのに一役買っていたと思う。彼は映画の人だ。

 

あと昭和シークエンスは、邦画らしからぬ全体に汚くも暗いトーンが徹底していて重厚感・迫力があり、キチンと映画館の大スクリーンで見る価値、見応えがあった。

 

後編が楽しみ!

 

☆4.0

 


映画『64-ロクヨン-前編/後編』 徹底ガイド 【驚愕の展開】ストーリー編


映画『64-ロクヨン-前編/後編』 徹底ガイド 【群雄割拠】キャラクター編

 

スタッフ
監督瀬々敬久

原作横山秀夫

脚本久松真一
瀬々敬久
脚本協力井土紀州

撮影斉藤幸一

 

キャスト
佐藤浩市/三上義信
綾野剛/諏訪
榮倉奈々/美雲
夏川結衣/三上美那子
窪田正孝/日吉浩一郎
坂口健太郎/手嶋
筒井道隆/柿沼
鶴田真由/村串みずき
赤井英和/望月
菅田俊/漆原
烏丸せつこ/日吉雅恵
小澤征悦/御倉
金井勇太/蔵前
芳根京子/三上あゆみ
菅原大吉/石井
椎名桔平/辻内欣司
滝藤賢一/赤間
奥田瑛二/荒木田
仲村トオル/二渡真治
吉岡秀隆/幸田一樹
瑛太/秋川
永瀬正敏/雨宮芳男
三浦友和/松岡勝俊

<恋とは違うエモーション>「ちはやふる 下の句」ネタバレなし感想

 

「恋とは違うエモーション」と主題歌に書いた中田ヤスタカの言葉通り、友とともに恋とも仕事とも違う打算とはかけ離れたものに、情熱を持って打ち込める唯一の機会「青春時代」と「部活」っていう組み合わせに「競技かるた」というスポ根的な要素もあり手垢の全くついていない題材、そして少しの恋愛三角関係を持ってきた妙はやはりさすがで、以下の不満点に目をつぶれば、表面的なストーリーには基本的に楽しめたと思う。

 

ただ続編を作る都合上、何かを壊さないと面白くならない、物語にならないのはわかるけど、二作目にありがちな「前作ラストで一度は完成していたチームを"破壊"からの"再生”」っていう「ハイ、全国を前に一人様子がおかしいですよ!」「ハイ、次仲間割れ!」とお決まりのパターンが前半早々に見えてしまって、後半部にそれを超えるものもなくゲンナリ。物語のオリジナリティなんて出尽くしてるのに「ベタさ」に文句を言っても仕方ないけど、見過ごせないのは前後篇で間に一ヶ月待たされてハードルは上り、さほど熱量が下がらなかったからかな。

 

やっぱり「上の句」でも悪所であった、一本にするには短い話を無理くり二本にしたもののちょっと時間を持て余す、前後篇ゆえの時間調整感、全国大会を前に、のんびりしすぎだろうと。明らかにテンポが落ちた所が何度も見られたのは残念。

噂の松岡茉優の存在感・演技の素晴らしさはたしかにあるけど、自分にとってこれが別に彼女の「ファーストインパクト」ではないしなー。「問題のあるレストラン」の方がすげえなこの人と思った。

 

前作での高い完成度、上がり切ったハードルからの落差は「ピッチパーフェクト2」に近い。

 

傑作邦画の神通力もここまでか。

 

☆3.0

 


「下の句」を観る前に! ”胸が熱くなる”「ちはやふる-上の句-」ダイジェスト!!


宇多丸 映画「ちはやふる 下の句」 シネマハスラー


「ちはやふる -下の句-」予告

 

スタッフ
監督小泉徳宏

原作末次由紀

脚本小泉徳宏

製作中山良夫 市川南
キャスト
広瀬すず/綾瀬千早
野村周平/真島太一
真剣佑/綿谷新
上白石萌音/大江奏
矢本悠馬/西田優征

 

<邦画からのアンサー>「太陽」ネタバレなし感想レビュー

 <邦画からのアンサー>

 
近未来、バイオテロによるウィルスが蔓延、人間社会がウィルス耐性を持つものと持たざるものの2つに分かれた世界の対立を描いた傑作舞台劇を映像化。
 
物語的にはサスペンスかと思ってたので、ドラマ重視の話の畳み方にやや肩透かし。あと門脇麦の起用法に関して異議あり
 
ただ技術面でいいなと思うところが結構あって、決して高くない予算だろうに撮影・照明・美術・ロケーションともに美しく、下手な大手邦画より高レベルで驚き。これはもうレベルの低さを揶揄されがちな邦画(入江悠監督)からの明確なアンサーに感じた。
 
まず(舞台劇というのもあるだろうけど)最近の世界的?トレンドの「長回しワンカット」をうまく取り入れ冒頭でカマし、東京からさほど遠くない埼玉の秩父とは思えない日本の神秘的な田舎の雰囲気を引き出した撮影とロケーションの妙が素晴らしかった。舞台原作だからとスケールが小さくてもよいというのには甘えず、ガンガンロケをして映像作品ならではの世界観の奥行きを見せていたのもよかった。
 
そして、「邦画は画面が明るすぎる!」と非難されがちな照明も自然光ならぬ自然闇を生かして「ちゃんと暗く」なっていて独特な田舎の雰囲気を出すのに一役を買っていたと思う。照明なんて詳しくないけど。(撮影近藤龍人氏と照明藤井勇氏は「そこのみて光り輝く」のコンビなのか。どうりで美しいわけね。照明の方は存じあげなかったけど、ほんと入江悠監督はいいメンバーで固めたなー)
 
近未来設定も、背伸びして邦画の苦手なCGを使うのではなく、お洒落な施設やクラシックカーなどうまく実在するもので済ますのがスマート。要は低予算なのにビジュアル面でのツッコミどころがほぼ無いんですよ。
 
後半に癖はあるけど、神木隆之介門脇麦古川雄輝高橋和也はじめ俳優陣も豪華で、しっかり楽しめたので観てよかった。