映画「あん」感想
「何者でもない私たちが生きる意味とは何か」
涙で銀座が沈んだ(©某フォロワーさん)。観たあとに、必ずどら焼きが食べたくなる上質な料理映画でありながら、人間ドラマもあり、日本独自の社会問題もしっかり描いている。闇を描くから光も際立つ。
まだインディーズ感のある監督やあらすじから、かったるい話かと思ったらそんなことはなく、映るたびに笑わせたりしんみりさせたりと必ず”何か"を起こしてくれる樹木希林の「画面支配力の高さ」にただ圧倒されっぱなしで下手なメジャー映画よりも退屈しなかった。サービスデーということもあり、久々に立ち見が出るほどの満席で観たけど、(信長の野望風味で言うと)彼女がスクリーンに映ると明らかに劇場内の「士気」が上がってた。明らかに。今後彼女のキャリアについて言及するとき、必ず言及されるであろう作品。つまり必見。
ただ邦画としては異様なほど"横文字だらけのエンドクレジット"からも明白なように「世界照準」なんだろう。そのせいかある部分に関して日本人には説明過多、類型的な部分もあったけど、日本人の心の機微や独特な社会問題を描いているこういう映画は好き。
永瀬正敏演じる店長さんの、自身の無力さを悔いるところと一歩を踏み出すラストの二度思いが溢れる場面で落涙。監督の指示であのアパートに泊まり込んだという彼の演技も素晴らしかった。
売れっ子若手俳優もアイドルも出てないけど、これは観るべき。
☆4.5