東京映画帝国

”全映画は3つの部分に分かれる” 基本的にネタバレなし、映画館鑑賞作のみの感想[評価/批評/あらすじ]。適度な長さとわかりやすい言葉でのレビューとなることを心がけてます。(☆は最大5。3以上で傑作)

<あくまでアニメの文法でゴジラをやりましたレベル>GODZILLA 怪獣惑星 ネタバレなし感想レビュー

<あくまでアニゴジで、「アニメでゴジラ」の枠を出ていない。>

 

一昔前に比べて日本のセル風3DCGアニメの不自然さもだいぶなくなっているし、ポリゴン・ピクチュアズと組むのも最良のタイミングだった。樹木モチーフというゴジラの造形・圧倒的スケール感も申し分なしだった。三部作の一本目として、締めるところは締めて終盤に「驚き」もあり、噂ほど全然悪くなかった。

 

ただ「前半が微妙すぎ」。主人公がいかにも日本アニメ的な万能・身勝手キャラすぎるのと、わかりやすいゴジラ憎悪、それに合わせて周りはご都合主義的に追認していくだけの連続っていうのがキッツいし、フォローできないレベル。主人公ばかりでサブキャラが薄くて見分けがつかない。作戦の内容説明云々を早口と言葉の情報量の多さでそれっぽい雰囲気を出し煙に巻くって手法もさすがにもう陳腐で…もう少しストレートに説明してよかったでしょ。ただ作戦自体がイージーに決まって拍子抜けなのは後半への「前フリ」で許せるけど。

 

あと元々TVアニメとしての企画だかなんだかしらんけど、劇場でこのジャンルをかけるにあたってビスタサイズってのは狭すぎるでしょ。

 

良かった所として「正しい戦略と備えがあれば人類は奴に勝てた」シンゴジラへのメタ言及っぽい台詞にはニヤっとした。製作タイミング的にありえないんだけど。

 

アニゴジと銘打ってる通りアニメ的な文法で描かれてるので拒否反応や賛否は分かれるだろうけど個人的には「ゴジラの世界を広げる為」にはアリかなとは思う。ガンダムだって色々やってコンテンツとして成長した。ただ前述の前半のダメさからとてもすぐには「三部作の一本目ならこんなもんか」とはなれないんだよなー。

 

☆3.0

 

 

 


アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』WEB CM<熱狂コメント篇>


XAI「WHITE OUT」ミュージックビデオ/映画『GODZILLA 怪獣惑星』主題歌


アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』TVスポット<キャラクター篇>

"深いね。深いでしょ。" 「海よりまだ深く」ネタバレなし感想レビュー

 

高い評判ほどには物語に乗れず。

「男ってやつはー!男ってやつはこういうところがダメなんだからな!!」と2時間ずっと真木よう子に往復ビンタを食らっているような気分だった。あの目線、彼女は演技関係なく、息子を迎えに来る羽目になったあの無神経なシチュエーションに女性としてキレてたと思う。監督は女か?(笑)でも新しい彼氏が元夫の本を読んだと言ったときの彼女の表情が忘れられないなー。

ただ、たしかに随所にフックになるパンチライン(名文句)満載ではあったけど、自分にはポストイットに書き溜めた「いい言葉」を深いでしょ?と言わんばかりにテキトーにばらまいただけに思えてしまった。そりゃ観てる人にもどれかは響くさ。そして清瀬市が舞台というロケーションのマジック、美しさも特になし。(あの辺りに住んでたから予想はしてたけど)

あと樹木希林は「反則技」だわ。多用、頼りすぎダメ。

そして何か変わったようで少しも変わっていない、ある意味一番罪深いラスト。そういうのを是とする「日常系」はやっぱ苦手だわー。自分は映画に「非日常」を求めてしまうので。

☆3.0

"幸せは空の上に" 「殿、利息でござる!」ネタバレなし感想レビュー

日本にもノブレスオブリージュ(富めるものの公共奉仕)があったんだ。

評判が良かったので鑑賞。「白ゆき姫殺人事件」「予告犯」の中村義洋監督なので期待して。(この流れで監督が時代劇やるのは意外だと思ったら、松竹発ではなく在仙台テレビ局の40周年記念企画で、伊坂作品で仙台舞台の映画を多く撮っている中村監督に是非にとオファー、監督が松竹に持ち込みというのがおもしろい)

村の有力者たちが「直接のメリットもないのに」数億もの金を出し合い、窮乏気味の伊達の殿様に金を貸し、その「利息」で夜逃げが多発するほど村と村人の大きな負担になっている伝馬役の経費をまかない、村に活気を取り戻そうという実話ベースのお話。劇中解説はわりと丁寧かと。

資金集めのために有力者を一人一人説得し、ウルトラCの民から大名への金貸し実現のために打ち首覚悟で、役人も一人一人説得。絶対無理ゲーのこれが成功するか否か…。色々ありながらも、まぁ予想通りに○○はするんだけど、「創作」なら出来過ぎだよ!といくらでも文句が言えるんだけど、(多少の脚色がありながらも)これは「嘘みたいな本当の話」なんだから何も言えない。あっぱれ、当時の人の努力と情熱に感心、感心の連続。

阿部サダヲがメインの派手なポスターとは裏腹にコメディ感やお話のドライブ感も弱く「超高速!参勤交代」のようにどさくさ紛れのチャンバラもなく、映画的な盛り上がりには少し欠けたけど、この「無私、公共奉仕の精神」という骨太なテーマの、普遍性と現代性の圧倒的な高さの前には勝てない。だって現代が「こんなの当たり前だよね」と馬鹿にできるような 世の中では全然無いんだもの。本当にあの知事や議員に見せたい。

物語としては一本道だけど、山崎努の出ている数十秒の何気ない冒頭シーンが伏線になっていて、忘れた頃に回収される脚本の妙もきちんとあったし、裏テーマとしてもう一つ人間ドラマもあってよかった。あとやっぱり竹内結子は映画になると華があるなー、余裕を感じる肩の力の抜けた演技もよかった。そして殿様役と聞いていた、羽生結弦くんも話の流れ上「これはまさか…」と思った通り、チョイ役ではなく終盤のけっこう重要なシーンを担っていてびっくり、さすがの存在感だ。
 
「いい話」すぎて引くレベルである以外は申し分ない映画。日本人なら「スポットライト」や「マネーショート」よりこっち見とけ!!

 ☆4.0

<噂通りの森田剛独壇場>ヒメアノ~ル ネタバレなし感想レビュー

<>、そのハマリ役ぶりとタイトルバックのインパクトだけでも観る価値あり。

ただイマイチ乗れなかったのは、ショッキングなシーン満載なだけにも見えてしまうこの作品をなぜ映画化したのかがぼんやりしていたから。

森田がおかしくなったのは、単純にっていうのも変だけど○○○が原因なのか?もともとそうだったのか?前者だとしても現場で○○○するもんなのか?とか自分の知識不足と解釈に幅をもたせた風の描写で、イマイチはっきりしないのがもやっとする。そもそもはっきりするものなのか?とか、とはいえはっきりしないものとして考えずに突き放していいのかってのもあるし。原作にはあったという森田の葛藤的描写がどうも気になるから、原作ではどうなのか読んでみたい。

ヒロイン佐津川愛美は名前を知らなかったから期待してなかったけど、前田敦子有村架純をあわせたようなかわいらしさで終始魅力的だったし、(まだまだ売出し中だろうに)ベッドシーンもそこそこ「頑張って」いたりと、終わってみれば納得のキャスティングだった。

あの森田剛の「殺しちゃっていい?」と「麦茶ー!」の声のギャップなー、あれは彼じゃないとできなかった。岡田准一生田斗真並にジャニーズの実力派として評価、今後も映画に呼ばれ続けるんじゃないだろうか。
 
☆3.0
 


ヒメアノ~ル PV

 

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<事件の真相より、社内政治ドラマが多めの前編> 「64ロクヨン 前編」ネタバレなし感想・レビュー

 

NHKドラマ化での評判の良さを聞いていた一作、これだけ豪華俳優で駄目ってことはないだろうとかなり期待して鑑賞。結果、観に行ってよかった!演技の素晴らしかった俳優は数えきれない!これは日本映画サスペンスの傑作の一つになるはず。かるた映画もいいけど、こういう骨太映画にも光が当たらないと。(後編まだだけど!)

 

同じ原作者作、日航機墜落事故追う記者を扱った「クライマーズハイ」のように、メインでドーンと出ている事件、「昭和64年の少女誘拐殺人事件の真相」というよりドロッとした社内(警察署内)政治ドラマが多めで、前者を期待すると肩透かしを食う。そういう気持ちに切り替えて観てれば十分楽しめるし、やっぱ組織に板挟みになるサラリーマンモノは安定の面白さ、熱さだよなー。(でも2年前に流行ったあるTBSテレビの日曜ドラマの影響をモロに受けてるのがなんだかなー。)

 

「悪名高い」前後編システムだけど、前編だけでもある意味完成してたし、(あらすじをよく読んでなかったから)前編のラスト、エンドロール直前で「おおお!これは絶対に後編観なければ!」って思うほど後編への「引き」もあった。後編でストーリーはどうなるか分からないし、推測していくと危うい所もあるけど、横山秀夫作だからあんまり心配してない。出演する俳優陣が超豪華なだけあった。

 

あとこれを観ると「学級会」と形容したくなるような噂の「公的機関と記者クラブの二者の伝統的なズブズブ感と面倒くささ」がなんか分かったっていうのは収穫。原作者が新聞記者出身ならではのリアリティだと思うけど、つまりは現実にこれに近い「学級会」が行われてるってことだよなー。中盤、記者クラブの記者が「めんどくさい」のをずっと見せられるのは苦痛だったけどこれは映画のせいじゃないもんな(笑)

 

記者クラブの本部長室への抗議文を持っての突撃シーン、と後半の主人公三上の新聞記者十数人を向こうに回しての演説シーンは、(シーンそのもののバカバカしさはありながらも)俳優対俳優の演技と演技のぶつかり合いによる迫力を十分に感じた。これは主演俳優・佐藤浩市が若い記者役俳優たちに「潰すつもりで来い」と発破をかけたのも一因だと知って納得。パンフレットのインタビューを読んでいても、彼の「座長」としての意識の高さ、責任感がこの映画全体の張り詰めた空気を作り出すのに一役買っていたと思う。彼は映画の人だ。

 

あと昭和シークエンスは、邦画らしからぬ全体に汚くも暗いトーンが徹底していて重厚感・迫力があり、キチンと映画館の大スクリーンで見る価値、見応えがあった。

 

後編が楽しみ!

 

☆4.0

 


映画『64-ロクヨン-前編/後編』 徹底ガイド 【驚愕の展開】ストーリー編


映画『64-ロクヨン-前編/後編』 徹底ガイド 【群雄割拠】キャラクター編

 

スタッフ
監督瀬々敬久

原作横山秀夫

脚本久松真一
瀬々敬久
脚本協力井土紀州

撮影斉藤幸一

 

キャスト
佐藤浩市/三上義信
綾野剛/諏訪
榮倉奈々/美雲
夏川結衣/三上美那子
窪田正孝/日吉浩一郎
坂口健太郎/手嶋
筒井道隆/柿沼
鶴田真由/村串みずき
赤井英和/望月
菅田俊/漆原
烏丸せつこ/日吉雅恵
小澤征悦/御倉
金井勇太/蔵前
芳根京子/三上あゆみ
菅原大吉/石井
椎名桔平/辻内欣司
滝藤賢一/赤間
奥田瑛二/荒木田
仲村トオル/二渡真治
吉岡秀隆/幸田一樹
瑛太/秋川
永瀬正敏/雨宮芳男
三浦友和/松岡勝俊

<恋とは違うエモーション>「ちはやふる 下の句」ネタバレなし感想

 

「恋とは違うエモーション」と主題歌に書いた中田ヤスタカの言葉通り、友とともに恋とも仕事とも違う打算とはかけ離れたものに、情熱を持って打ち込める唯一の機会「青春時代」と「部活」っていう組み合わせに「競技かるた」というスポ根的な要素もあり手垢の全くついていない題材、そして少しの恋愛三角関係を持ってきた妙はやはりさすがで、以下の不満点に目をつぶれば、表面的なストーリーには基本的に楽しめたと思う。

 

ただ続編を作る都合上、何かを壊さないと面白くならない、物語にならないのはわかるけど、二作目にありがちな「前作ラストで一度は完成していたチームを"破壊"からの"再生”」っていう「ハイ、全国を前に一人様子がおかしいですよ!」「ハイ、次仲間割れ!」とお決まりのパターンが前半早々に見えてしまって、後半部にそれを超えるものもなくゲンナリ。物語のオリジナリティなんて出尽くしてるのに「ベタさ」に文句を言っても仕方ないけど、見過ごせないのは前後篇で間に一ヶ月待たされてハードルは上り、さほど熱量が下がらなかったからかな。

 

やっぱり「上の句」でも悪所であった、一本にするには短い話を無理くり二本にしたもののちょっと時間を持て余す、前後篇ゆえの時間調整感、全国大会を前に、のんびりしすぎだろうと。明らかにテンポが落ちた所が何度も見られたのは残念。

噂の松岡茉優の存在感・演技の素晴らしさはたしかにあるけど、自分にとってこれが別に彼女の「ファーストインパクト」ではないしなー。「問題のあるレストラン」の方がすげえなこの人と思った。

 

前作での高い完成度、上がり切ったハードルからの落差は「ピッチパーフェクト2」に近い。

 

傑作邦画の神通力もここまでか。

 

☆3.0

 


「下の句」を観る前に! ”胸が熱くなる”「ちはやふる-上の句-」ダイジェスト!!


宇多丸 映画「ちはやふる 下の句」 シネマハスラー


「ちはやふる -下の句-」予告

 

スタッフ
監督小泉徳宏

原作末次由紀

脚本小泉徳宏

製作中山良夫 市川南
キャスト
広瀬すず/綾瀬千早
野村周平/真島太一
真剣佑/綿谷新
上白石萌音/大江奏
矢本悠馬/西田優征

 

<邦画からのアンサー>「太陽」ネタバレなし感想レビュー

 <邦画からのアンサー>

 
近未来、バイオテロによるウィルスが蔓延、人間社会がウィルス耐性を持つものと持たざるものの2つに分かれた世界の対立を描いた傑作舞台劇を映像化。
 
物語的にはサスペンスかと思ってたので、ドラマ重視の話の畳み方にやや肩透かし。あと門脇麦の起用法に関して異議あり
 
ただ技術面でいいなと思うところが結構あって、決して高くない予算だろうに撮影・照明・美術・ロケーションともに美しく、下手な大手邦画より高レベルで驚き。これはもうレベルの低さを揶揄されがちな邦画(入江悠監督)からの明確なアンサーに感じた。
 
まず(舞台劇というのもあるだろうけど)最近の世界的?トレンドの「長回しワンカット」をうまく取り入れ冒頭でカマし、東京からさほど遠くない埼玉の秩父とは思えない日本の神秘的な田舎の雰囲気を引き出した撮影とロケーションの妙が素晴らしかった。舞台原作だからとスケールが小さくてもよいというのには甘えず、ガンガンロケをして映像作品ならではの世界観の奥行きを見せていたのもよかった。
 
そして、「邦画は画面が明るすぎる!」と非難されがちな照明も自然光ならぬ自然闇を生かして「ちゃんと暗く」なっていて独特な田舎の雰囲気を出すのに一役を買っていたと思う。照明なんて詳しくないけど。(撮影近藤龍人氏と照明藤井勇氏は「そこのみて光り輝く」のコンビなのか。どうりで美しいわけね。照明の方は存じあげなかったけど、ほんと入江悠監督はいいメンバーで固めたなー)
 
近未来設定も、背伸びして邦画の苦手なCGを使うのではなく、お洒落な施設やクラシックカーなどうまく実在するもので済ますのがスマート。要は低予算なのにビジュアル面でのツッコミどころがほぼ無いんですよ。
 
後半に癖はあるけど、神木隆之介門脇麦古川雄輝高橋和也はじめ俳優陣も豪華で、しっかり楽しめたので観てよかった。